外画吹替レギュラーのお仕事!姿勢と呼吸

今日は外画レギュラーです。

この作品オンエアが早いのですぐに自分の芝居をチェックする事ができて有難いです‼︎
スタッフさんは納期が早くて大変なんですが…
そのためスムーズにスピーディーに収録を進めていかなければいけません。

ずっと姿勢を課題にやってきましたが、
少し前からセッション・個人レッスンで教わっている事を使って変化が起きてきました。

腕を使う事で呼吸がしやすくなったのです。

もともと猫背で姿勢が悪かったので意識し出したのですが、
猫背だと胸を圧迫して呼吸自体の邪魔になっていました。
しかし芝居に集中するとマイクや画面に向かって傾いてしまい、
セリフの合間に真っ直ぐに戻すを繰り返していました。

あまり気にしすぎると固くなってしまい、
自然と動く範囲も押さえてノリが悪くなります。
このバランスが取れずに四苦八苦していました。
姿勢が悪くても過剰に意識しすぎても後で身体が疲れます。
難しい。

しかし今日は意識的に腕を使って呼吸する事で、
かなり楽になりました。
姿勢も前傾になっても無理せず真っ直ぐに戻り柔らかくなった気がします。

さらに呼吸が身体に入る量も増えたようです。
やはり身体を固めて縮こまってしまい、
楽に呼吸できていなかったのだと思います。

胸周りが楽になると音も自然と深くなり、
いろいろ効果が出てきました。
これは良い。

改めて身体の使い方の大切さを感じた現場でした。

外画アニメ吹替のお仕事!丁寧な演出

今日は宣伝映像を録った作品の本編です‼︎

大元は実写の作品なのですが、
スピンオフをアニメでやるようです。

今回のディレクターさんは最近ちょこちょこと呼んでくれる方で、
前に舞台芝居を強く出したらそこを気付いてくれた方です。

しかし宣伝映像の時にハッキリと演出として言われたのは、
今回はしっかり元の映像・音声に雰囲気を合わせて欲しいという事でした。

この作品は元より膨らませず抑えずキッチリやる方向のようです。
一言一言、細かくセリフに乗せる感情を演出されてとても丁寧に進められていました。

匙加減が難しい!!

語尾の上げ下げから立てる単語まで、
演出として要求する事をどれだけ具体的にしてきているのかがとても伝わってきました。

ディレクターがどういう方向でやりたいのか
今までもそれを理解しようとしてきましたが、
最近それをもっと正確に深くできるようになりたいと最近思うようになりました。

そこに、自分がこうしたいという芝居を効果的に乗せる事ができたら
自分の仕事の質をもう一段上げる事ができる。

業界全体が大きくかわり自分は厳しい状況ですが、
好きな事を仕事としてやっていくために
自分も大きく変化していけるようになりたいと思います。

海外アニメ吹替のお仕事!吹替時の基本

今日は海外アニメの吹き替えです‼︎

内容はよくわかりません。

というのも作品の宣伝用映像の吹き替えだったからです。
自分のセリフはちょっと驚いて声を上げるというものなのですが、
どんな役なのか映像からは全くわかりませんでした…

この役、自分が来週やるそうです。
作品本編より先に宣伝用を録る事になり急遽呼ばれたという事でした。

現場でディレクターから説明を受け、
映像を確認しました。

自分の収録の持ち時間もかなり短く設定されていたので焦りもあり、
映像を見ながら少しセリフを言いながら尺合わせを始めると
ディレクターから注意をされました。

「はじめは映像をしっかり観て芝居の感覚を読み取って欲しい」

これは確かにその通りでした。
家では一度映像を通して観て自分の役と全体の流れを確認するのですが、
焦ってしまいいきなり合わせを始めてしまいました。

本番では前後の状況を詳しく説明されながら、
テイクを重ねました。
とりあえず時間内でスムーズに終わりましたが、
吹き替える映像を見る時の基本をいつも忘れないようにしていきたいと思います。

政府関連ナレーションのお仕事!これまでのナレーターの読みから調整

本日は、政府の広報関連のナレーションを収録して参りました。

1クール毎に、内容も変わるのですが、今回は災害や食育に関するナレーションです。

過去のデータをオンラインで聞いたところ、アナウンサー出身の方が読まれていました。

こういう感じを求めてるのかな・・と思い、現場に入ったところ、

案の定、打ち合わせをした際にあまり砕けすぎない方が良いというお話でした。

早速、APHで教わっているポイントを意識しながら姿勢を整え、
できる限り、以前の読み方に寄せるよう努めました。

おかげさまで、テストでOKを頂けたので、テンポや倍音を抑えつつも、
アナウンサーとは違う語尾の置き方にこだわり、役者としての呼吸に集中しました。

ページ数もそれなりにありましたが、
今、教わっている技術のおかげさまで倍音と高音の合わさる基底音をより
安定させることができたと思います。

この技術をちゃんとやればリピート間違いなしですが、
この技術もまだまだ奥が深いので、さらに響きを深く取れるように稽古していきます。

外画吹替レギュラーのお仕事!キャラクター設定が途中で変わる!

今日も外画レギュラーです‼︎

収録がようやく再開されてホッとしてます。
いろいろあってストーリーやキャラクターの設定が一新されました。
同じ役ですが劇中の設定が変わっちゃったんです。

基本的な性格は同じですが生い立ちなどが変わりけっこう別人になりました。
作品が長く続くとこんな事があるのかと大変楽しい状況デス。

土曜セッションでは身体の使い方のレベルがどんどん上がっていっています。
自分はかなり遅れているのですが、
現場でずっと課題にしてきた姿勢を今日もやって行きました。

自分が姿勢をずっと気にしているのは、
もちろんそれが声を出す基本なのもあるのですが
マイク前に立つとどうしても無意識に前のめりになってしまうからです。

そのため胸あたりが圧迫されてたり、
クビに無駄な力が入ったりと声を出すのに邪魔な要素が増えてしまっています。

セリフを喋り出す前には足元から頭まで真っ直ぐな視線で立っているのですが、
芝居を初めて自分のシーンが終わってみるとやっぱり前傾施設で前のめりになっているのです。

マイクを外さない程度に動いて芝居しているのですが、
自分の動きは前と左右に偏っています。

足を1本踏み込んで前のめりになるのはこのせいなのかもしれません。
芝居に集中すればするほど無意識にこうなるようです。

気持ちは乗りやすいのですが、
ちょっと身体に無駄な負荷がかかるのを何とかしたい。
今日も真っ直ぐな姿勢で芝居ができるようにやっていました。

芝居中前のめりになったらどこかで真っ直ぐに戻す。
パソコンのキーボードを打つホームポジション?に戻る感じでしょうか。

今日はうまくいきました‼︎

感情的に爆発するようなシーンがなく、
コントロールしやすい範囲だったのもありますが
終わった後の首肩の疲れ方がぜんぜん違いました。
やってる最中も声がスッと出ていたように思います。

やはり姿勢が良くなると音の通りも良い。

次回もこの感じでいきたいと思います。

某航空会社のVPナレーションのお仕事!直接受注する時代!

怒涛の3月が去りました。

おかげさまで、スタジオ案件や宅録案件に恵まれ、忙しい日々を送らせて頂きました。

内容も、VPから商品説明、TVCM、WEBCM、会社案内、あらゆるジャンルを対応させて頂き、

感謝感謝です。

中でも印象的だったのは、これまで某登録サイトを通して宅録のお仕事を頂いていたのですが、

今回初めて、直でお仕事を頂いたことです。

流れとして、私のホームページを見て下さり、
ツイッターからメッセージを頂くという具合でして・・・

まさに時代の流れですね。

しかもこちらは、皆様ご存じの某航空会社の案件で、子供たちに飛行機の乗り方を説明する動画です。

これまで事務所経由で頂いていたような大きなお仕事が、
個人に!直で!ご依頼を下さるという・・なんとも有難いお話しです。

そのくらい、予算が削られているというのが本当の所かもしれませんが・・。

ただ私からすると、大大大チャンスなわけです。

さらに言うと、私は子供向けの番組に携わることを一つの目標としているのですが、

今回頂いたお仕事はまさに私がやりたいお仕事そのものでした。

空港で撮影された映像を元に、
子供たちが飛行機に乗るまでにどんなことをしていくのかを学べるように説明する案内係です。

心躍る気分で収録させて頂きました。

まさに「歌のお姉さん」です(笑)

ディレクションは全部メールで行いますので、
私が収録した音源をメールで送り、しばらくの期間チェック待ちです。

数日後、ご要望がメールで返ってきて、私はその部分を録りなおし、再送します。

有難いことに、この1回の修正でOKを頂けたので、とてもスムーズであったと思います。

ただ「個人で仕事をする」となると、これで終わりではありません。

収録前には、見積書作成もありますし、その後、請求書・領収書発行も自分で作成します。

それらを送るタイミングやいつお返事を頂けるのかわからないメールの返信作業、
全てやりながら、本業のナレーションを行うのです。

ぶっちゃけますと(笑)金銭的な部分は、これまで事務所で管理して頂いていたのが、
全部私が管理することになるのですね。

それこそ、自分ではやりにくい部分なので事務所に頼っていましたが、今は個人の時代!

「自分の仕事を自分で管理する力」が試されます。

でもこれって・・今は当たり前のことかもしれないなと思ったりします。

ナレーションの実力を付けながら、自分でマーケティングも行い、
営業もして、金銭管理もする、事務作業もする、
そんな時代が来ているんだと肌で感じています。

有難いことに、直でご依頼をもう1件頂きましたので、
そのお話はまたお伝えさせて頂きたいと思います。

代表が仰って下さったとおり、正しくやっていれば、誰にでもチャンスがあります。

実力があれば、生き残れます。

この時代に感謝して、実力を付けて参ります。

外画吹替レギュラーのお仕事!ようやく再開

今日は外画レギュラーです。

 

一話からしばらく収録が止まっていたのがようやく再開されました。

何年も続くシリーズになってくれているので有難い限りです。

 

新シーズンになっていろいろと設定などが変わりました。

かなり劇的なストーリーの作品なので毎シーズン新しい作品になった感覚があります。

 

今シーズンは第一シーズンの頃のようなミステリー要素が強くなりました。

冒頭の導入ナレーションもやっているので、

ミステリー色強くシリアスさを出したい所です。

 

まず導入では自分の低めの音と声のざらつきを使っていきました。

後でマネージャーから

「もの凄い怖い感じになってた」

と言われたので思った方向にはできたようです。

 

最近の土曜セッションで自分の弱点である下半身など下の支えが強化されたのか、

以前のように息が抜けて音にならずコントロールできない所が少なくなったように感じました。

吸った息を掴める割合が増えたように思います。

 

下の支えが良くなったので、

セリフの方も小さく喋りつつも低めで音にしやすくなりました。

これを高音でも使えるようになれば…

強化していきたい所です。

 

そして今日から収録参加人数が10人くらいに緩和されました。

コロナが始まってから最大4人だったのが一気に倍になり、

人の多さにちょっと驚いてしまいました。

 

3年ぶりのマイクワークに少しビビりながらも、

共演者が出す熱と緊張感で自分もテンションが上がるのを感じました。

人付き合いが苦手な自分ですが、

芝居は共演者がいた方が圧倒的に良いと改めて感じました。

 

これから先、収録の形が元に戻るかは微妙ですが

この熱と緊張感を常に自分で出せるようにやっていきたいと思います。

ゲームキャラの声のお仕事!ワークショップからゲット!

去年参加したワークショップの成果がようやく出ました‼︎

ゲームの仕事をゲットしたのです‼︎

 

そのワークショップはとあるディレクターさんがやっている所で、

かなり前に一度オーディションでお会いしてから季節のご挨拶だけしていた所お誘いを頂きました。

 

当日使ったスタジオは今まで自分が行ったことのない所でした。

自分の仕事は海外ドラマの吹き替えがメインで制作会社もある程度同じ所からのものです。

 

そうすると使われるスタジオもだいたい同じような所になる傾向があります。

 

自分がよく行くスタジオは何というか…

昔から使われていた年季の入った所が多く味のある内装をしています。

 

今日のゲームで使うスタジオはブース内がかなり綺麗で座って収録するタイプでした。

普段はナレーションなどで使われているのかと思います。

 

かなり横長の木のテーブルでちょっと洒落たカフェのようでした。

スタジオが違うだけでこんなにも雰囲気が違うのが新鮮でした。

 

自分の役は嫌味な上司です。

自分のできる限りの高音とワークショップで面白いと言われた芝居を混ぜてやりました。

この役を作る時ある声優の方のイメージが浮かんだのでその人の芝居も参考にしました。

 

ノド声にならないようにギリギリを使いながらやっていましたが、

テンション上げて演じているとやはり無理をする所も出てきました。

 

やってみると参考にした方はこんなにエネルギーを使ってやっていたのかと驚きました。

見ていてとても面白い芝居はやはりエネルギーを使って作られている。

演じる側がヒーヒー言いながら限界までやってようやく面白いと思ってもらえる。

 

終わった後のクライアントとディレクターの反応は上々でした。

良かった。

特にクライアントはとても喜んでくれました。

 

メインの役は良い手応えでした。

次は他の通行人などです。

 

この通行人役。

二役振られていたのですが

先ほどのメインの役と行列に並んだ順番で揉めます。

二役とも。

 

そのシーン

自分と自分と自分で口論になる状況だったのです。

 

準備段階でこれはできるか⁉︎

とヒヤヒヤしていました。

通行人二役とも大きく偏ったキャラクターを作って行きましたがOKが出るかどうか⁉︎

 

と、思っていたら

現場で

「ほかの通行人役はちょっと本役と近すぎるのでほかの方にやってもらいます」

 

え?

あ、一応作ってきたんで一度やってみようかと…

 

「大丈夫です‼︎お疲れ様でした~」

 

…とりあえず自分の仕事はOKだったという事でしょうか。

一度試しに聴いてもらいたかった気持ちもあるのですが、

ホッとした気持ちも正直ありました。

 

次のチャンスには何か面白い芝居ができればと思います。

「プロになるまでの全て!」Yさん編22

APHでは芝居だけでなく普段からの立ち居振る舞いについても教わります。
代表からいつも
「外見は一番表に出ている内面だ」
と言われます。
この言葉の通り自分自身をどう表現するのか?どう伝わるか?を考えて
普段の服装から振る舞いに気をつけろという事です。

Sさんははパッと見ただけでそれを実行している事がわかりました。

サンプル収録後、飲み会がありました。
いつもは同期入所の新人とレッスンで会う以外
事務所の人と会う機会がなかったので初めて正所属者と話せる良いチャンスです。

飲み会の席でもSさんは凄かった。
話題から新人へのアドバイス、社長に対しても礼儀正しくしつつ
自分の意見をしっかり言える。
お酒にも楽しそうに付き合いつつ酔って崩れる事もない。

先にAPHで立居振る舞いについて教わっていたおかげで、
Sさんはそれを意識的にやっている事がよく分かりました。

言葉にすると簡単そうですが実際これを徹底するのは
だらしない自分には本当に大変です。
この時、これができている新人は当然一人もいませんでした。
自分はAPHメンバーに手伝ってもらって
服装だけは何とかできる限り気をつけていましたが、
もともとお酒が殆ど飲めない自分は
飲み会の立ち回りが全く分かりませんでした。
これはマシになったとはいえ今でも苦手です。

Sさんは上手く社長と新人の話を繋ぎつつ、
新人全員についてサンプル収録で感じた事を話してアドバイスしてくれました。
未だに自分の事ですぐ手一杯になってしまう自分から見てこれは凄い事でした。

APHで言われる事を実践していて仕事もバリバリやっているSさんは、
身近な目標であり尊敬する先輩になりました。
今でもSさんとは仲良くさせて頂いています。

この時のオーディションは残念ながら自分は受かりませんでした。

オーディションが終わってまたレッスンだけの日々がしばらく続いた後
ビックリする事がありました。

このSさんの事を自分と同じ新人が悪く言い始めたのです。

小さい事務所なので事務所兼レッスン場のような場所になったため、
台本の受け渡しで来る正所属の先輩と会う機会が増えました。
そこでSさんにアドバイスされた新人がそれを文句を言われたと受け取ったようです。

これには本当に驚きました。

内容はSさんが新人の女の子に
「普段着のような格好に見えるから衣装だと思って気をつけた方が良い」
という内容でした。

実際、現場に出てみると新人でなくとも
服装を自分のイメージを作るために拘っている人は当たり前にいます。
自分のスタイルとしてラフな格好をする人もいますが、
この時の自分や同期は現場に出てもいない新人、
言ってしまえばまだ素人同然の立場です。
当然芝居は未熟です。
せめて服装だけでも気を使い周りに
良い印象を持たれるようにというSさんからのアドバイスでした。

これを文句と言ったらSさんに失礼過ぎる。
そう言ってもその新人の子は全く理解してくれませんでした。

レッスン場でSさんと会う機会が増え飲み会になった時にも話しをする機会が増えました。
APHの教えからSさんの立居振る舞いや
アドバイスについて心底尊敬できるようになっていたので、
感謝の気持ちをできるだけ伝えるようにしました。

するとSさんは自分ととても嬉しそうに話をしてくれるようになりました。
そして
「良かれと思って言ってるんだけどね。なんか怖がられちゃうんだよね」
と寂しそうに言っていました。

この時、Sさんの言っている事を理解していたのは
自分と同期のもう一人しかいませんでした。
APHで教わっていなければ
自分もあんな風にSさんに対して失礼な態度を取ったかもしれない
と思うとなんだか情けなくなります。

そうやってSさんと仲良くなってしばらくしてから、
ボイスオーバーの仕事が自分に来ました。
今回は自分が使えるのかお試しという事でギャラはなし
で、という物です。

 

「プロになるまでの全て!」Yさん編 記事一覧

「プロになるまでの全て!」Tさん編19

これは、予想していなかった。

うちのような小さい事務所に吹替の仕事が丸ごと任される。

キャスティング権がある。

今思うとこれは、声優業界の仕組みが壊れてきた序章だったのかもしれない。

とにかく、予算がない。

それなりに仕上げてもらえたらそれでok。

そういう会社が業界を牛耳る時代に変わり始める前兆だったのかもしれない。

突然社長から話が有り、私が主演の男の子役に決まってしまった。

吹替は、大きな声優事務所に入らないとできないと思っていた仕事だった。

でも、今、下の層に・・・

大手事務所に入ることができなくて、

でも声優を諦めきれない人たちがワンサカいる地帯に、こうしてチャンスが巡ってきた。

これは思ってもみなかった。

この現象は嬉しい反面、吹替の仕事って、

もっとレベルの高い場所にあるんじゃなかったっけ?と不思議だった。

主演・子役といえば、
私のイメージだとシックスセンスやホームアローンやレオンが思い浮かぶ。

もちろん、今回携わるのはメジャーの作品ではない。

B級ホラーだ。

それでも手の届かないと思っていた「吹替現場」に私がいる。

実力もない私がBQホラーの主演、少年役を演じる。

ずっとやりたかった声の仕事。

素直に嬉しかった。

事前に台本を頂き、当日は小さなスタジオで収録。

いや、本当のことを言えば、あれはスタジオではない。

もちろん機材やブースや控室まできちんと整っていて、収録には申し分のない場所だ。

でも・・言いたくないけど・・ここは自宅兼スタジオのようなところだった。

私が思い描いていた「現場」じゃない。

私が想像していた「現場」から程遠い。

やりたかった仕事をしているはずなのに、なんか納得いかない。

仕事に恵まれない人も大勢いるのに。

これはとても有難いことなのに、今、ここで頂く仕事に不満を抱いている。

私が行きたいのはメジャーだ。

きっと今の事務所にいたら、これからも吹替の仕事に携わることはできるのだろう。

安いギャラだけど経験を積む事はできるのだろう。

でもここで止まるわけにはいかない。

もっと上に行きたい。

同じ「主演」「吹替」っていう言葉なのに、
私が行きたい場所と、今いる場所が全然違う。

私は「メジャー」にこだわりたかった。

この小さな事務所で留まり続けるわけにはいかない・・。

もう一個上のランクの事務所に行かなくては。

辞めようかどうか迷っているとまたチャンスが巡ってきた。

今度は、海外アニメの吹替だった。

ずっとやりたかった子供向け番組。

事務所は前回と違って、外部にも宣伝をしてオーディション形式をとった。

同じような境遇の女子たちが、沈黙の中で、
受かりたいという闘志で空間を埋めて独特な臭いをさせる。

私はこの事務所の人間だから「受かる」と、信じ込んでいた。

バチバチする静寂の戦いに、優越感すら感じた。

結果は、不合格。

なめていた。

所詮、私はこの程度のレベルだった。

実力も。そして、考え方も。

この私を落とすなんて信じられない!

この低レベルの争いに負けたなんて!

冷静じゃない私の本音が止まらない。

事務所、やめちゃえ!

「プロになるまでの全て!」Tさん編 記事一覧