「プロになるまでの全て!」Tさん編22

路頭に迷っている私を何とか事務所に繋げようと、
周りの方が助けてくださった。 
もう忘れてしまうくらい沢山の機会を頂いた。
あのエキセントリックな劇団から、
中堅の声優事務所、
そして、Yさんが所属されている大手事務所まで。
とにかくコネで、面接まで辿り着くことができた。
この時にプロフィール作成やお土産選び、便箋の用意、電話対応から
紹介して下さった方へのお礼、報告連絡相談など、
沢山の流れを叱られながら身に付けさせて頂いた。
チャンスはスピードとタイミングだ。

しかし、ことごとく、断られる。
もう断られるのに慣れてしまった。
どうせ、ここも落ちるんじゃないか。
やっぱりな。
また落ちた。
またか・・
もはや落ちることが当たり前になり、
最初はがっかりしていたのが、今や平気になってしまった。

こんな状態で、ある声優事務所を見つけた。
社長がちょんまげをしている変わった場所。

レッスン生として中に入れば、
オーディションのチャンスはあるそうだ。
レッスン料も安かったので、
若い子に混ざって、一緒にレッスンを受けることにした。
実際にゲームのキャスティングをしている男性Dさんがいたので、
とにかく抜きん出て結果を残そうと頑張った。
でも、ゲームって・・・
全然ゲームをやらない私。
ゲームのキャラボイスと言われてもなかなかピンとこない。
何でも良いから、仕事せねば!
自分とはかけ離れたものでも、とにかく何でもいい!
そんな気持ちだった。

もうすでに私の持つエネルギーが落ちていた。
闇を抱えて負のオーラを背負っている感じ。
こんな状態では、良い事務所、良い人とは出会えない。
心の中で、負けない!こっから!って思っていても、目に見えない部分が悲鳴を上げている。
もうダメかもしれないっていうほんの少しの迷いが滲み出て隠せない。
どうしたら良いんだ。
私の本心がわからない。
何で声優になりたいんだっけ?
自分の軸がわからないまま、当てもなく彷徨う。
とにかく事務所、事務所に入らねば。
焦る自分。
でも何とかなるって思ってる私。
この狭間で、闘いが続く。

結局、そのちょんまげ社長の声優事務所には行かなくなり、辞めてしまった。

どこにも全然受からない。
ご縁がない。
全部、自分のせい。

そんな私が諦めないでいられたのは、代表の個人レッスンのおかげだった。

この不遇時代、
私が何をしていたかというと、週に一回、
個人レッスンを受けて、呼吸の稽古をしていた。
そして、その日録音させて頂いたレッスン内容を家に帰って書き出していた。
この時の書き出しの力は大きい。
秘伝が沢山書かれているこのノートは、一生もの。
ダメな私を救ってくれる宝物。
どん底の私は個人レッスンで実力をつけるしかなかった。
毎週本質に触れられるように導いて頂き、自分の可能性がどんどん見える。
まだ私、やれる。
虎視眈々とチャンスを待ち続けていた。

だが、待ちぼうけている。
ずっと続けているコールセンターのバイトのおかげで、
なぜか電話営業がとても上手くなった。
営業成績が300人中いつも10位以内。

自慢だよ。
すごく虚しい自慢。

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