ありがたいことに、クビにはならず(笑)
そのまま継続することができた。
プロになったけど、いまいち、ピンと来ていない。
なんか、楽をしてお金を稼いでいる感じがしてしまった。
というと語弊があるかもしれないが、私のイメージするプロには実力がある。
漠然と考えてるから、本当の実力が何かなんて、わかっちゃいない。
でも私は、私の思うプロのイメージからずいぶん遠い場所にいた。
巡業は私の居場所だった。
専門の同期は四季の舞台で主役を張っている。
仲の良い友人も自分が不合格になった大きな作品に出演し、帝国劇場に立っている。
正直、羨ましかった。
自分はその力も自信もないし、認められない。
比較されていつも選ばれない。
しかし
「巡業で下積みをしたら役者の基盤ができそうだ。」
「パッと出る役者よりも息の長い役者になれそうだ」
という私の勝手なイメージを軸にして、
負けず嫌いで自信がない私を支えた。
私がいる場所は、世間から見たら落ちこぼれだった。
もちろん、そうではない。
私の固定観念だ。
結局の所、人からどう見られるかをすごく気にする傾向がある。
良い評価を受けたい、名声が欲しい、褒められたい。
巡業は大変だけど将来ビッグになったら、賞賛が得られるにちがいない。
そんな計算を腹に納めた。
確かに巡業で鍛えられた。
スタッフさんのお仕事を実際に自分がやることで、こんなに大変なのかと・・(笑)
欲まみれな自分、評価を気にする自分、傲慢な自分を打ち砕くにはよい環境だったと思う。
でも、それが糧になるかどうかは、その人次第。
本当なら少しでもこの経験が未来の自分に良い影響を及ぼしていてほしいが、
欲まみれで褒められたい私は、どう見られるのかが重要で、
正直、人として学ぶべき事をすっ飛ばした。
この経歴が有れば、きっと将来的に友人に負けない。(バカか。)
こんなふうに、すぐ人を敵にしてしまう悪いクセがある。
オーディションに落ちることで劣等感を感じ、固く落ち込む。
私も「ダメじゃない」「すごいね」って言われたい。
合格している人が、敵にしか見えなくて自分が痛い。
でも・・この下積みを超えたら、大きなオーディションに私はきっと受かるんじゃないか。
だから、がんばろう。
オーディションに落ちても平気でいて傷つかないようにするには、
何かしらの思い込みが必要だった。
虚勢を張っても意味なんかないのに。
私は、欲という闇から這い上がる業を持った女優です。
腹黒だから。 (笑)
まず巡業というステップ1で、そこを越える何かに気づいてもらいたいが、
腹黒い私はまだわからないままだった。

さらにいうと肝心なお芝居の事も何もわからないでいる。
もうワンパターンだった。
だって、求められてるものがあるから、それしかできない。
その台本ができれば、オッケーだった。
だけど、その求められてるものもちゃんとできていたかというと疑問だ。
演出家の言いなりだった。
自分に実力がないから、何も言い返せない。
その上、自分のどうしたい!っていう考えも、曖昧。
何にも考えてない自分は、そこをどうしていいかわからなかった。
人に合わせることで、楽をしてた。
悪く思われたくないから言われたことをそのまま鵜呑みにする。
私はどうしたいの?
それが、ない。
いいこちゃんの典型だ。
「腹黒良子(はらぐろよいこ)」という人間が出来上がった。
腹黒良子は、受け身だった。
まだ何かを誰かに教わろうとしている感じ。
上手くなりたいけど、わかんない。
誰に教わろうか。
そんな視点でしか物事を考えられないようだ。
気持ちは上には行きたいけど、行動と考え方が伴わなかった。
子供たちからサインを求められると、
バカだから調子に乗った。
と同時に、なんかわからないけど、もやもやした。
周りと比べて、何にも考えてない自分が、悔しいくらい何にも考えてない事が嫌だった。
でも、何をどう考えて良いのかも分からず、
途中で諦めて考えるのをやめる。
だから、ずっとバカのままだった。
もっというと、日常に流されていた。
私は、本番をこなしていたのだ。
当時は、こなしてるなんていう考えもない。
なぜやっているのか?
中身を埋めようとした。
子供が好き。
そこから先は行き詰まる。
ただ目立ちたいだけかもしれない。
それではダメだ。
子供たちになにができるか考えてみよう。
そこに、ステキな理由を肉付けしようとしたのだ。
全部、キレイゴトだった。
でもやっぱりこの仕事、やめたくない。
子供たちへの想いがあるから頑張れるんだと思い込んだ。
好きだからやってる。
プロっていったいなんだろうか?
私はこの先、どうするんだろうか?
私はどこへ向かうのか。
どうしてやってるのか。
答えにたどり着かない。
ひとりの力では決して気づくことができなかった「影響力」という言葉の定義。
私には、影響力を持つものとしての責任がある・・・
ということに気づくのは
まだ先。
実感を持って人に感謝をするというのもまだまだ今の私にとっても修業の一部。
この時は、今よりもっと固くて、停滞していた。

「プロになるまでの全て!」Tさん編 記事一覧
- 全力新連載「プロになるまでの全て!」Tさん編01女性声優 T さんをご紹介します。 女性として最初に登場してくれる Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編02親も担任も応援してくれない。その反骨精神が原動力となって劇団ひまわ Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編03専門学校卒業後、夢追いフリーターになった。毎日が自由だからこそ、夢 Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編04ケッケコーポレーションの預かりになった。週に一度だけ音響監督のレッ Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編05居場所を失った私はバイトとレッスンに明け暮れた。ダンスの先生やメン Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編06小学3年生の時に、芸術鑑賞会が有った。劇団の人が、体育館で演劇を見 Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編07早朝。 小学校に到着した瞬間、懐かしい気持ちと不安が入り混じる。目 Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編08ありがたいことに、クビにはならず(笑)そのまま継続することができた Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編092年目から、新作の主役を務めることになった。私に実力があったからじ Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編10役者を目指してる人に会うと、よく警戒していた。 常に比較され続けて Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編11APHに入った最初の頃、私は旅公演をメインに活動していた。そのため Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編12褒められて嬉しかったし、乗り越えた感もあった。芝居でこんなにも、充 Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編13夏。最悪な事態が起こってしまった。 父から「話がある。」と言われて Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編14私は母の死後、四国へ行った。 切り替えたいのか、忘れたいのか、自分 Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編15わかりやすくて、大袈裟なお芝居が、得意だった。というか、それしかわ Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編16代表に、声優になりたいと伝えてから、私のターゲットが明確になった。 Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編17ずっとお世話になっている共演者のMさんが、番組の裏方として携わって Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編18落ち着いて冷静に考えたら、断られることなんて当たり前なのに、どれだ Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編19これは、予想していなかった。 うちのような小さい事務所に吹替の仕事 Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編20事務所をやめてフリーになった。 早速、新しい事務所探しに奮闘する日 Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編21さて、事務所を辞めてしまった。また路頭に迷うことになった。せっかく Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編22路頭に迷っている私を何とか事務所に繋げようと、周りの方が助けてくだ Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編23ここから、長い長い自分との闘いが始まる。 事務所に所属できるように Continue Reading →
- 「プロになるまでの全て!」Tさん編24吹替ワークショップは現場に近い空気を吸うことができて、環境はとても Continue Reading →