全力新連載「プロになるまでの全て!」Tさん編01

女性声優 T さんをご紹介します。

女性として最初に登場してくれるのは、声優Tさんです。

彼女は元々、プロのミュージカル女優として、
活躍していた女優さんです。
常に1000名程も入る観客達を前に、
7年間もの長い間、常に主役を務めてきた人です。

色々あってミュージカル女優から声優に転身し、

今でこそ外画の吹き替えでは、ホラー映画の主演を務め、

最近では、ついに念願であった
難関の化粧品会社テレビCMナレーションをGET!するなど、
カッコイイ女性の代弁者として、目覚ましい活躍を始めています。

一方で日本語の美しさを買われ、大変にお堅い
日本政府官公庁のVPナレーションにも抜擢されています。

これも製作者側に大変好評で、こちらも、
レギュラーナレーターとして、常に指名がかかる様になりました。

また、プロの声優達の中から、さらにオーディションで選ばれる、
某大手声優事務所のキャスティング選考会に、
30名中わずか5名という難関を潜り抜け、ピックアップされています。

みなさんに、こんな風に紹介すると順風満帆の様に聞こえますが、

特にミュージカル女優から、声優に転身する間の3年間の彼女は、

それはそれは、とんでもない試練の連続だったのです。

私は、その試練の時間を共に歩みましたが、
まさに底なし沼に引きずり込まれて行く様な感覚がありました。

様々な、ワークショップ、面談、紹介、最終選考、etc・・・

彼女は不屈の魂で果敢に動き回り、様々なチャンスを作るのですが、
全てのサイクルが、後少しのところでダメになるのです。

ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!

丸3年間、彼女は、本当に暗い闇をさまよい続けます。

しかし、彼女はくじけませんでした。
それは、声優という仕事が、本当にやりたい事だったからです。

彼女は決してくさらず、常にターゲットを創造し、
日々の稽古に打ち込みながら、持ち前のガッツで行動し続けました。

その結果、天はついに彼女に、微笑んでくれたのです。

現在では「新しい大きな波」に乗って、生き生きと仕事を積み重ねています。

APH代表 茂 賢治

本当は女優さんになりたい
でも女優さんは綺麗な人がなるんだから
私は女優さんになれない
ずっとそう思っていた。

子供の頃の私は音楽が大好きで、
教育テレビを見ながら一緒に歌って踊っちゃう!
誤解をおそれずに言うと、ジャイアンみたいな女の子(笑)
でもだんだん成長するにつれ、恥じらうようになって、
出たがる自分を抑えるようになっていった。

私の夢は女優さん。
ずーっと心の中で思ってるけれど、全然なれる気がしない。
どうしても、容姿に対するコンプレックスを振り払えないでいる。

そんなある日、本屋さんで
「声優グランプリ」という雑誌と出会ったのだ。

声優さんが顔を出してインタビューを受けている!!
声優さんってアイドルみたいに何でもできるんだ!!
衝撃的だった。

雑誌を見ながら、声の仕事いいなあと憧れを持つのと同時に
アニメも好き 歌も好き 舞台も好き
あっ私NHKの歌のお姉さんになりたかったんだっけ・・・!などなど。
自分の容姿のせいで諦めかけていた夢が勢いよく、膨らんだ。

これなら私にもできそうだ!
おこがましくも、そう思ってしまった。
単純すぎる(笑)
当時は本気なので、必死に声優特集雑誌を読み漁って
立派な声優オタクに成長。

「声優になれるのは1万人に1人だ」
「声優は役者なんだ」
「声優は本来裏方なんだ」
「ブームが終われば消えていく」

そんな言葉に触れるたびに
どうやったらブームに流されない声優で居られるのか・・
やっぱり劇団に入って舞台で経験を積んで、それから声をやるべきなのか・・
そんな事まで考えあぐねる中学生の私だった(笑)

高校入学後は袴に憧れて弓道部に入り、青春を謳歌!
友人とはしゃぎまくって、いつも笑ってばかりいた。
声優養成所に行く目的でアルバイトもしたけれど、
稼いだお金は友人との交際費や
大好きな坂本真綾さんのCD代やライブ代や雑誌代に消えてしまう(笑)

買った雑誌をひたすら読んで自分なりに研究し、
声優アイドルは顔じゃない!
実力をつけたらいいんだ!!
ブームに流されない役者になってやる!
もともと影響を受けやすい私は、その気になって盛り上がっていた。

高校2年の冬で弓道部を引退し、友人達は受験の準備をし始めた。
進学校なのでほぼ全員が大学受験をする。
私は、夢があるので受験する気は全くない。
しかしみんなが試験勉強をする姿を見て、不安になってきた。
本当に受験しなくて大丈夫だろうか?

そこで声優アイドルになりたい理由を探そうとしてみた。
それらしい理由が有れば、不安がなくなると思ったからだ。

でも浮かんでくるのは実感のないキレイゴトばかり。
本当は自分がやりたいだけ。
私が好きだからやる
目立ちたい
人気者になりたい
ただそれだけだった。

でも認めたくなくて、
「それで良いはずがない!」と頭の中がぐるぐるしてきて、わからなくなって、
最後はもういいや!と考えるのをやめてしまう。
とても視野が狭く、頑固。もう決めたら一直線。
周りが見えず欲望に従って行動していた。

高校3年生の時、声優になるなら舞台を観ておいた方が良い気がして、
バイト代で沢山お芝居を観た。
実はこれも声優雑誌の影響だ。
先輩方が、声優はお芝居が根本だと言っていたので、間に受けたのだ。
なかなかのものだ。
徹底して影響を受けているな、私。

そして学校帰りに偶然観た劇団四季のライオンキングで、人生が変わった。
舞台の華やかさ、セットの素晴らしさ、そして音楽に感動したのだ。
さらには、小学生の時に心を奪われた
「新宿コマ劇場ミュージカル・シンデレラ」と重なって、
あの時と同じ気持ちが湧き上がってくる!
それは、「女優さんになりたい」という純粋な想いだった。

私も舞台に立ちたい。

コンプレックスから声優アイドルという立ち位置を見つけた私は初めて
「正々堂々と女優を志してもいいのではないか・・実力をつければ良いんだから」と
気持ちが変化したのだ。

早速、親を説得して劇団ひまわりに入団した。
昔から、決めたら即行動。
とにかく夢を叶えるために、何かしていたくてたまらない。

劇団ひまわりを選んだのは、
・歌とダンスとお芝居と全て出来る
・金銭的な問題
・有名だから親が安心する
といった理由だ。

高3の夏。
NHK連続テレビ小説の「ちゅらさん」という
その頃とても流行っていた番組のエキストラ募集がかかった。
エキストラだし学校にはバレないだろうとタカをくくって参加すると、
運悪く(運良く笑)主役の国仲涼子さんの後ろの席に
自分の学校の制服を着たまま座らせられ、がっつりテレビに映ってしまったのだ。

やってしまった・・・。

放送日、担任から呼び出しがかかった。
「私は役者になりたいんです」と告白した瞬間、空気が凍りつく。
「お前はこの学校に何しに来たんだ?」と聞かれ、その冷たい言葉に傷付いた。
大学を受験しないのは、この学校の生徒として、おかしい事だった。

一方で、家でもその事で母と喧嘩をした。
私:大学になんか行かない!
母:役者なんかで食べていけるわけないでしょ!
私:なんでそう決めつけるのよ!
母:わかりきった事でしょう?

こんなやり取りがずっと続き・・・・
挙句の果てに泣きわめいて反抗していた。
母とは、しばらく口を聞いてもらえない日々が続いたのだ。

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