「プロになるまでの全て!」Tさん編23

ここから、長い長い自分との闘いが始まる。

事務所に所属できるようにと、Y先輩が面接の機会を与えてくださったり、
ディレクターにボイスサンプルを渡してくださったり等、
沢山の機会を作って下さるにも関わらず、チャンスをものにできない。

さらに、昔お世話になった演出家が、
某声優事務所との面接の機会を作って下さったのだが、
これも対面で丁重に断られた。

帰りに、演出家が私に「もうこの道は諦めた方がいい」と言い放った。
自分が作っている現実とはいえ、ひどすぎる。

あまりにも、私の中でストップが多い。

そのせいで事務所に受かっていないという現状がある。

代表との個人レッスンでは、
「私が創り出しているストップ」を発掘するための方法を伺い、
そして必死に呼吸の稽古を続けた。

自分がストップしている「何か」は自分で見つけるしかない。
その「何か」を突き止める作業が始まった。

一つ一つ、直面すると、本当の私が見えてくることが何度もあった。
自分が自分に作ってしまった壁を自分で外していく。
その作業は苦しく、楽しく、最後は心が軽くなるような感じもした。
けれど、一筋縄ではいかない。
私のストップはあまりにも大きすぎた。

そもそも、「ストップ」している自覚がない所からの始まりだった。

私には「まだいける!次こそ決める!」と、プラス思考で体当たりできる力が有った。
だからこそ厄介で、自分でストップしている感覚がなく、何がいけないのかが見えない。

元々、自分の事しか考えられない私は、浅はかで、全部が表面的だった。
自分の「中心」が一体何なのかわからない。
まだまだ私は、稽古がエクササイズの段階なのだ。

「安心」したい!
「答え」がほしい!

長いことAPHに籍を置いているにも関わらず、まだ養成所生の感覚が抜けていなかった。
だから、あらゆることに浮かれたり、落ち込んだり、一喜一憂していた。
そんな私が、やっとここから「本質」に触れて、抜本的に自分を変化させていくのだが、
一朝一夕にはいかない。

APHの講義で「ど真ん中」「中心」に触れる内容を伺ったので、
一生懸命、ノートに代表の言葉を書き留め、家で新しい紙に書き直す。
そしてその紙をファイルに入れて、何度も読み返す。
言ってることは何となくわかる・・でも、どうやったら中心で居られるのか。
頭で考えるばかり。

とにかく、今できることは個人レッスンで「呼吸」を稽古させてもらうことだった。

まだ全然わかってないけど「呼吸」を稽古すると何も考えられなくなる瞬間が何度もあった。
その時間は、とても静かで自分が集中しているのがわかる。

そんなある日、「ここを掘っていけばいいんだ!」と気づく瞬間があった。
代表とその瞬間を共有させていただき、おかげさまで私は「ボディボイス」を通じて、
芸事に対して真剣に生き始める。

「本質」に触れると気分が上がる。
その感覚はわかる。でも、まだほんの少し触れただけ。
今の私は、自覚していない「固定観念」や「嘘」で凝り固まっている。
「正直」から、かけ離れた場所にいる。

でも、嘘をついている自覚もないし、固定観念?なんのこと?
その無自覚の見えない部分との戦いは、
痛い所を突かれた時に直面できるかで勝負が決まる。
私の中にいる何かを変えないと、事務所は一生決まらない。
いつも、固くて深刻な自分。
何となくわかる。
でもどうしたら良いかわからない。
代表も一緒に頭を抱えている状況が続く・・・
本当に胸が痛い・・なんなら頭も痛い・・

おかげさまで、個人レッスンで稽古を続けることで、
少しずつ「気付き」が増えていく。
考え方も実力も全然まだまだ追いついていない中で、
昨日の自分よりも少し成長することを積み重ねていく。
本質に触れる機会を頂き、1枚1枚自分を剝いでいく。
でも日常を生きていると、また戻ってしまう。
そしてまた、個人レッスンで代表の力をお借りして、取り戻す。
その繰り返し。

どうにかせねば!!

常に、事務所所属のことが頭にある。
そして、いつものように検索し、ある吹替ワークショップを見つけた。
現役の音響監督が講師。
現場と同じ環境でレッスンができる。
認められれば現場への出演チャンスあり。
大手声優事務所オーディションへの参加可能。
月謝は少し高いけど、最後のチャンスのような気がして、週に一度通うことにした。
次こそは!

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