「プロになるまでの全て!」Yさん編23

Sさんと仲良くなってしばらくしてから、
ボイスオーバーの仕事が自分に来ました。
今回は自分が使えるのかお試しという事でギャラはなしで、という物です。

ギャラなしには正直腹は立ちましたが、
この時の自分にはハッキリと強い自信がありました。
APHでやって来た事を考えれば、
実際の芝居を聞いてもらえば必ず結果はついてくると。
大きなチャンスでした。

そして当日。

自分の役はメインの登場人物のうちの一人。
しかも番組は自分の役のインタビューで終わります。
締めを担う良い役でした。

楽しかった。

今まで現場でこうしたいと思ってAPHで、
事務所レッスンでやって来た事をようやく現場で使う事ができた。
ギャラはなくても最高の時間でした。

終わってすぐ、共演した正所属のKさんが
「最後のインタビューの所良かった」
と面と向かって言ってくれました。

同じく共演したSさんも
「彼は良い芝居するんですよ」
と相槌を打ってくれました。

すぐ横には社長がいます。
最高の援護射撃があったおかげで次の回から
キチンとギャラをもらってこのボイスオーバーシリーズに参加する事になりました。

このKさんとも今も仲良くさせて頂いています。
Sさん、Kさん本当に有難うございます。

後日、社長から聞いたのですが
「講師のDさんと正所属のS君から
ずっと君が良い芝居をすると言われていたから試しにボイスオーバーに入れてみた」
と言われました。

そこで
「世間は良い物をけっして放ってはおけない」
という代表の言葉の意味が少しわかった気がしました。

自分がやって来た事を認められて仕事がもらえる。
ようやく新事務所でプロの声優としての仕事を始める事ができました。

B社長は芝居に関しては、
自分がAPHでやって来た事を見せてもいまいちピンと来ないようでした。

自分には流行りのアニメですぐに主役を張るような華やかな所は無いようです。
個人的な好みとしてもいわゆる流行りのアニメ芝居というのは聞く分には良いのですが、
自分ややるとなると好きではない。

B社長はそういう分かりやすい部分にしか反応しませんでした。

そのため講師のDさんや正所属のSさんに
「アイツは良い」
と言われてようやく自分を試しに使ってみるか、という程度でした。

しかしお二人の後押しのおかげでその評価も変わって来ました。
「新人の中ではアイツは使える方らしい」
と。

これでようやく数ヶ月に4、5本ボイスオーバーがあるかないかと言った位でしたが。
これ4、5本ですが1日で収録してギャラはまとめて1本扱いです。
小さい事務所はこんなもんです。

そして相変わらず事務所レッスンは続きます。
たまに仕事はもらえますがレッスン代で大きなマイナス、赤字です。
金を払って仕事をもらってるような状況ではプロと胸を張っていえません。
養成所資金で助けてくれた父も
「そんな事では食えない、いい加減諦めろ」
と言ってきました。

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