「プロになるまでの全て!」Yさん編11

自宅での稽古が解禁され、セッションでも声が出せるようになり
自分の中に、完全に無くしていた「自信」が
本当に少しずつですが芽生え始めました。

外から見たら、ワークショップに通うただの素人。
しかし自分の中には「希望」が生まれました。

現場に出るために必ず必要なもの。
自分が持たずに現場に出て失敗した原因。
「実力」というものが少しずつ身に付き始めました。

「確信」と「実感」を得て「希望」が生まれた自分は、
その稽古を自分にしては珍しいくらい必死にやりました。
「これをやれば憧れたあの有名声優のような声が出せる!!︎」
そう思えたからです。

APHでの稽古に手応え・充実感を感じるようになってセッションが楽しくなっていきました。
それ自体は良い。
しかし目先の事ばかりで、もっと先の事を考えてなかった。
肝心の現場に出る道は見えていないのです。

正直、自分ではどうすればいいのか全くわかりませんでした。
無意識に考えるのを避けていたのかも知れません。

そんなある日、前事務所から仕事が来ました。
ごくたま~に仕事をもらっていましたが、この時は違いました。

アニメのレギュラーだったのです。

信じられませんでした。
クビなった人間になんで?
なんとクビになる前に自作して持って行っていたボイスサンプルを
事務所がしっかりと営業で活用してくれていたのです。

それがクビになってずいぶん経ったこの時、仕事に繋がったのです

APHでは、
仕組みに沿ってやれば結果は出る
と言われます。
サンプルを作って持っていくのは、ありきたりでしたが仕組みに沿っていたのです。
まさかこんな形で結果が出るとは思ってもいませんでした。

そしてもう一つ。
自分をAPHに誘ってくれたTさんも
同じアニメに出演しました。

二人とも、APHのメンバーとして、同じ現場で、マイクの前に立ったのです。
本当に嬉しかった。

この仕事は自分の中でとても大きなものでした。
念願の初アニメレギュラー。
Tさんとの共演。
そして自分の力の無さ。

APHで稽古し始めたとは言え、まだまだ小さな変化です。
実力が追いつかなかった。
それを痛感した現場でもありました。

毎回毎回、自分の理想と現実のギャップに打ちのめされました。
楽しかったけど、苦しかった。

APHで稽古を始め、少しずつ変化して、本当の実力というものを少しだけ理解した事で
自分の力の無さも感じられるようになったのです。
前事務所にいた頃の「自分はできる!!︎」という勘違いから抜け出し始めました。

このアニメレギュラーが終わった後、
「前いた事務所に御百度参りをするといい」
と代表に言われました。

耳を疑いました。
クビになってかなり経っていたのですが、
まだちょこちょこと前の事務所から仕事をもらっていました。
アニメレギュラーまで来ました。

しかしクビになってから、「自分から」事務所に連絡をした事はありませんでした。
ましてや事務所に顔を出すなんて事はできないと思っていたのです。

しかし代表は、
「まだ仕事を振ってくるという事は戻れる望みがゼロではない」
「他を探すにしても、前の事務所との関係を中途半端なままで次に気持ちを切り替えられるのか?」

「白黒ハッキリつけて来い!!︎」

とても痛い所を突かれました。

事務所をクビになって終わりかと思っていたら、少し仕事をもらえる。
自分は「いつか事務所に戻れるかも?」という希望を抱いていました。
しかし自分から言う勇気はない。
もし戻れないとハッキリわかったら?
怖くてできませんでした。

それでも、いつか、頑張っていれば、いつか。
そう考えていました。

それを「自分から」ハッキリさせに行く。
今までほとんどしてこなかった事です。
なんとなく、流れで、結論を自分でハッキリ出す事をしてこなかった。
避けてきました。
そうとう追い詰められないとできない。

そして追い詰められている事にも気付けない。

代表から、
お前はもうとっくに追い詰められている。
自分でしっかりと結論を出して来い。
そう言われたのです。

恐ろしかった。
クビになる前に多少自分でやりましたが、
自分にとって、用もないのに事務所に顔を出すのは本当に苦痛でした。

なにをしていたらいいのかわからない。
事務所スタッフが仕事をしている中、自分はなにをしていたらいいのか?
全く分からずただ座っていた。
いづらくてしょうがなかった。

それを今度は、クビになった部外者という立場でやるのです。
ハッキリ言ってやりたくなかった。

でも、
「中途半端なままで次に気持ちを切り替えられるのか?」
これは本当にその通りでした。

大失敗をしてクビになって最寄駅に着くだけで苦しくなる事務所に行きたくない。
しかし、前の事務所に怯えたまま次に行く事もできない。
やりたくなかったけど、やらなければいけないと思いました。

自分の失敗と向き合わずに前に進む事はできないのです。

ここからもう一度、声優として仕事をするために
APHにある「仕組み」に沿って行動するのです。

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