「プロになるまでの全て!」Yさん編19

親に土下座をしてお金を出してもらい、
APHで代表、メンバーにたくさん助けてもらった結果が不合格。
自分は終わったと思いました。
実家に帰って何をしようか。
30からできる仕事はあるのか。
でも芝居以外何の技術もない自分がどうやって。
などと考え始めていました。
しかし

「俺はどうしても終わったとは思えないんだよな」

「まだ何かある気がするんだ。思い当たる事はないか?」

と代表に聞かれました。

行くあてがなくて養成所からやり直し不合格になった自分に聞かれても…と思っていましたが、
ふと元講師Dさんの言葉を思い出しました。

「そう言えば講師だったDさんからこんな事を言われました。
結果だけでも教えてくれ、と」

「それだ!!!!!!」

電話口から代表の力強い声が響き自分の耳に突き刺さりました。

「それだ!!今すぐ連絡しろ!!早くしろ!!」

Dさんからはただ結果を教えてくれと言われただけです。
なんで代表がこんなに急かすのか全くわかりませんでしたがとにかく連絡してみる事にしました。

時間は夜の7時か8時くらいだったでしょうか。
Dさんはすぐに電話に出てくれました。

「お~久しぶりだな。どうした?」

自分は以前にDさんに言われた通り結果を伝えるために電話した事を伝えました。

「ああそうか、結果出たか。どうだった?」

「ダメでした」

「え!?…そうか~俺はお前なら行けると思ったんだけどなぁ」

「申し訳ありません…」

「ならBが新しく作った事務所に行くか?
できたばっかりで上手く行くかはわからないんだけど」

 
Bとは通っていた養成所を運営していた事務所の元社長。
養成所二年目に入る時、所属声優半分と一緒に辞めていったB社長の事です。
そのB社長が辞めた声優の一部と一緒に新しく事務所を立ち上げていたのです。

「そこはまだ所属人数が少なくて役者を探してるから良ければ俺が紹介するよ」

思いもよらない展開になりました。

結果を報告するだけのはずが新しい道が開けたのです。

「Bに聞かせるサンプルを用意しといてくれ。Bに会う日が決まったら連絡するから」

Dさんとの電話が終わった後、代表に報告しました。

「な!言った通りだろ!!」

まさかこんな事になるとは思ってもみませんでした。
しかし代表は今までの経験から必ず道はあると感じていたそうです。

こうして実家に帰る寸前から
代表のアドバイスとDさんの力によって
事務所に入るための新たな道を見つける事ができたのです。

所属試験に落ちたドン底から新しい道は開けましたが、
まだ決まったわけではありません。

B社長に聞いてもらうサンプル作りを必死に始めました。

B社長に会う日も決まり、サンプル製作も終わりに差し掛かった頃
思いもよらない大事件が起きました。

その日、自分はとある地下の貸しスタジオでサンプルの収録をしていました。
するとギィ~っと軋むような音と共にブースが揺れ出しました。

「録音中に地震か!?ノイズが入る!!」

揺れが収まったので収録を再開するとまた揺れ出しました。

イライラしました。
今自分は大事な時なのにこんな邪魔が入るなんて!!
揺れが収まるのを待っているとブースのドアが開き店員さんが来ました。

「一旦ブースを出て避難してください!!」

かなり慌てた様子でした。

「大きな地震だったのかな?」

ロビーに出ると、そこにあったテレビに映っていたのは黒煙を上げているどこかの施設でした。

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