「プロになるまでの全て!」Yさん編22

APHでは芝居だけでなく普段からの立ち居振る舞いについても教わります。
代表からいつも
「外見は一番表に出ている内面だ」
と言われます。
この言葉の通り自分自身をどう表現するのか?どう伝わるか?を考えて
普段の服装から振る舞いに気をつけろという事です。

Sさんははパッと見ただけでそれを実行している事がわかりました。

サンプル収録後、飲み会がありました。
いつもは同期入所の新人とレッスンで会う以外
事務所の人と会う機会がなかったので初めて正所属者と話せる良いチャンスです。

飲み会の席でもSさんは凄かった。
話題から新人へのアドバイス、社長に対しても礼儀正しくしつつ
自分の意見をしっかり言える。
お酒にも楽しそうに付き合いつつ酔って崩れる事もない。

先にAPHで立居振る舞いについて教わっていたおかげで、
Sさんはそれを意識的にやっている事がよく分かりました。

言葉にすると簡単そうですが実際これを徹底するのは
だらしない自分には本当に大変です。
この時、これができている新人は当然一人もいませんでした。
自分はAPHメンバーに手伝ってもらって
服装だけは何とかできる限り気をつけていましたが、
もともとお酒が殆ど飲めない自分は
飲み会の立ち回りが全く分かりませんでした。
これはマシになったとはいえ今でも苦手です。

Sさんは上手く社長と新人の話を繋ぎつつ、
新人全員についてサンプル収録で感じた事を話してアドバイスしてくれました。
未だに自分の事ですぐ手一杯になってしまう自分から見てこれは凄い事でした。

APHで言われる事を実践していて仕事もバリバリやっているSさんは、
身近な目標であり尊敬する先輩になりました。
今でもSさんとは仲良くさせて頂いています。

この時のオーディションは残念ながら自分は受かりませんでした。

オーディションが終わってまたレッスンだけの日々がしばらく続いた後
ビックリする事がありました。

このSさんの事を自分と同じ新人が悪く言い始めたのです。

小さい事務所なので事務所兼レッスン場のような場所になったため、
台本の受け渡しで来る正所属の先輩と会う機会が増えました。
そこでSさんにアドバイスされた新人がそれを文句を言われたと受け取ったようです。

これには本当に驚きました。

内容はSさんが新人の女の子に
「普段着のような格好に見えるから衣装だと思って気をつけた方が良い」
という内容でした。

実際、現場に出てみると新人でなくとも
服装を自分のイメージを作るために拘っている人は当たり前にいます。
自分のスタイルとしてラフな格好をする人もいますが、
この時の自分や同期は現場に出てもいない新人、
言ってしまえばまだ素人同然の立場です。
当然芝居は未熟です。
せめて服装だけでも気を使い周りに
良い印象を持たれるようにというSさんからのアドバイスでした。

これを文句と言ったらSさんに失礼過ぎる。
そう言ってもその新人の子は全く理解してくれませんでした。

レッスン場でSさんと会う機会が増え飲み会になった時にも話しをする機会が増えました。
APHの教えからSさんの立居振る舞いや
アドバイスについて心底尊敬できるようになっていたので、
感謝の気持ちをできるだけ伝えるようにしました。

するとSさんは自分ととても嬉しそうに話をしてくれるようになりました。
そして
「良かれと思って言ってるんだけどね。なんか怖がられちゃうんだよね」
と寂しそうに言っていました。

この時、Sさんの言っている事を理解していたのは
自分と同期のもう一人しかいませんでした。
APHで教わっていなければ
自分もあんな風にSさんに対して失礼な態度を取ったかもしれない
と思うとなんだか情けなくなります。

そうやってSさんと仲良くなってしばらくしてから、
ボイスオーバーの仕事が自分に来ました。
今回は自分が使えるのかお試しという事でギャラはなし
で、という物です。

 

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