全力新連載「プロになるまでの全て!」Yさん編01

男性声優 Yさんをご紹介します。

全力新連載「プロになるまでの全て!」
第1回に登場してくれるのは、男性声優Yさんです。

彼はいつの間にか「週平均7~9本」もの仕事をこなす
人気声優になってしまいました。

韓流ドラマ吹き替えの主演をこなしたかと思えば、
最近は、様々なシリーズ物に主演し始めています。

また、彼を信頼して仕事を任せるディレクターがすでに数名おり、
そのディレクター達の話しによると
「彼はどんな球を投げても、必ず受け止めてくれる存在」なのだそうです。
それは、たぶん嘘だと私は思っています(笑)

しかし、それが現実なのか、彼の仕事は年々確実に安定してきています。

その結果、各クール事に持つ数本のレギュラー番組をベースにしながら、
新しい仕事を広げて行くという、声優として理想的な環境を手に入れつつあります。

彼は今でこそTOP声優達と素敵なバトルを繰り広げながら、
日々の精進も忘れない、充実した声優ライフを送っています。

しかし、彼がこの場所にたどり着くまでには、
本当に信じられない程の、深い挫折と苦悩がありました。

これはまさに「困難に次ぐ困難を超える」物語です。

「本当にこんな事が、現実の世界で起こるのだろうか?」
「なんだそれは?マンガでも聞いた事がないぞ!?」

そんな事の連続でした。

自分の才能を信じ、あきらめなかったYさんは、
一体どう考え行動したのでしょうか?

彼の経験に耳を傾けながら、一緒に学んで行きましょう。

APH代表 茂 賢治

声優になろうと思いました。

自分は元々絵を描くのが好きでした。
漫画、アニメも大好きで放送しているものはジャンル問わず全て見ていました。
小学生の頃は漫画家になりたいとか考えてましたが、
姉の方が圧倒的に絵が上手く
「コイツには勝てない」
と諦めました。

高校で進路を決める時、
「声優になろう」
と思いました。

別に演劇部ではなかったし、
芝居に興味があったわけではありません。
声優的な要素といえば、
国語の授業で文章を読むのが上手いと先生に褒められた事くらいでした。
とにかく漫画やアニメにかかわる事がしたいと思ったからです。

声優という仕事自体は声優雑誌、アニメなどを見てよく知っていました。
今でも尊敬する神谷明さんをはじめ、
当時の声優なら声を聞いたらすぐに誰かわかるくらいには好きでした。
あとは何となく楽しそうだなくらいの気持ちでした。

声優は自分の顔を出しません。
アニメや海外の俳優の声を当てます。
自分とはまったく違う人間になれる。
当時の自分は、アニメで見て憧れた主人公
ヒーローになりたかったのだと思います。

しかし漠然とした考えで、強い想いがあったわけではありません。

その割には専門学校に行く際に、
親に対して人生初の反抗をしたりと結構強情に押し切りました。
父は大学に入って欲しかったらしく、
強く反対してきたのですが、それに対する反発もあったと思います。

本当に思い付きで何も深い理由はありません。

単純に勉強が嫌いで大学に行きたくなかった、
楽しい仕事がしたい、好きな事がやりたい。

ずいぶんワガママな理由だと今は思います。

そして専門学校に入ろうと考えたのですが、
ちょっと調べて見つけた所に行こうと思いました。
これも今思うと完全にカモになりに行くようなものです。
よく事務所につながったなあと驚きます。

この専門学校にしようと思った決め手は、
夏の体験入学があり、とある超実力派有名声優が講師に来ていて
それに参加したからです。

この人のファンではありませんでしたが、
あるSFアニメの主人公を演じられていて
そのアニメが大好きだったのです。

参加してみた結果、

凄かった。

三時間の特別授業で題材は、
「あめんぼ赤いな~」というヤツです。
参加人数は20人くらい。

三時間の授業で二人しか見てもらえませんでした。

まず話が長い。
30分以上喋ってる。
やっと始まってみると「あめんぼ~」
くらいで「違う‼︎」と止められる。
そこでまた話が始まる。

今ならある程度止める理由も理解できますが、
当時はなぜ止められるのか?全くわかりません。
最初に読んだ生徒はどんどん追い詰められていきました。

教室が異常な緊張に包まれる中、二番目の生徒がカ行を読み「違う‼︎」と止められ
気付いたら生徒二人でア行・カ行を読んで三時間が過ぎました。

自分は全く見てもらえませんでしたが、
「なんかわからんが凄い‼︎」
と妙に強く感じました。
そして「ここに入ってあの人に教わる‼︎」と決めたのです。

しかしいざ声優科に願書を出してみると

落ちた‼︎

高校の先生は、
「推薦があれば入れるだろ」
と言っていたのに…嘘つきやがった。
さすがに焦りました。
受験勉強などしていない。
高校三年の最後の半年はずっと授業中寝ていた。
そもそも高校入学後半年で、成績は下から三番目。
卒業間際のこの時期までそれをキープしてきました。
まずい。

すると専門学校から
「入学金10万安くするからラジオパーソナリティー科入らない?」
と電話が来ました。
もちろん「入ります」と即答しました。

親には「何で⁉︎」と言われました。
そりゃそうですよね。

なんかもう東京に行きたい、家から出たいだけだったような気もします。

声優科ではありませんが一応専門学校に入りました。
あの人に教えてもらえる‼︎と思っていたら、

ご本人主催の養成所を作りやがった‼︎

体験入学は宣伝のためだったらしく
専門学校の廊下に養成所のチラシが置かれていました。

そして特別講師にも来やしねぇ‼︎

騙された‼︎

しばらくテレビであの人の声を聴くと無性に腹が立ちました。

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