やられました。
今日の外画収録で、とある事件の犯人を演じた人。
シーンとしてはシリアスで重苦しい雰囲気。
ある夫婦が離婚で揉め、夫が妻を殺してしまいます。
その殺された妻の母が、犯人である娘の夫と面会する。
大変重要なシーンでした。
笑ってしまってしょうがなかった。
この自分の妻を殺した男を演じた方の演技が
素晴らしかった。
ずっと泣きながらポツリポツリと喋るのですが、
音がいろんな所に飛んでとても豊かでした。
静かに泣きながら重苦しくセリフを喋るのは良くやる手なのですが、
この人は違いました。
高音から低音。
セリフの力点。
全てを目まぐるしく変えながら泣いていました。
特にある疑問形のセリフの語尾で「か?」という部分。
そこを「かっ!?」
と、文字にすると難しいのですが突然甲高い音で言うのです。
スタジオの共演者が思わず全員うつむきました。
笑いをこらえるので必死だったのです。
その人の芝居がシリアスでなかったのではありません。
とても必死に嗚咽を抑えながら喋っているように聞こえました。
でも面白い。
笑ってしまうほどに。
ここでこの音を使うのか!?
このセリフをこんな風に言うのか!?
やられました。
悔しいと言うより、とても気持ち良くやられてしまいました。
最近、仕事をしながらセッションに参加して
自分の表現が一定の枠に固まってしまっているのを
代表から指摘されました。
安定感があり、台本に沿っている。
でもこの人のようなおもしろさがない。
目の前でこれだけやられると嫌でもわかります。
自分の枠の狭さが。
でも本当に有り難かった。
APHで言われた事を体現してくれる人がいる現場に
出られるのはほんとうに有難いです。
出番が終わった後、その人は汗だくでした。
シーンは3分もないくらいです。
相手のセリフの裏で泣き芝居はありましたが、
セリフは多くありません。
短いシーンの中でこの人は全力を尽くして演じたのだと思います。
その後、自分の出番でした。
バリエーションが少ない。
全て変えたつもりでしたが、
あの人ほど豊かにはできなかった。
これは悔しい。
あんな風に豊かな芝居をしたいと思わせてもらいました。
改めてAPHの技術の重要性を感じました。