外画の現場で。ベテランの方の演技を観て思った事

今日も外画です。

緊張しました。
手が震えました。

今日も警官や通行人の役です。
自分に振られた役の中に苦手なある役があったのです。

アナウンサーです。

アナウンサーの役割は、情報を伝える事です。
そこに個人的な感情は基本ありません。
これが自分にとって難しいのです。

感情の乗った説明なら、
長文でもそれほど苦にはなりません。
いろいろやりたい事、やるべき事があり、
楽しく演じる事ができます。

しかしアナウンサーには基本、それがありません。

情報と言葉を正確に丁寧に伝えるのです。
ある意味、技術がハッキリ出るのではないかと思います。

作品の雰囲気が重苦しく、
ニュースの内容も凄惨な事件でした。

それを変に煽らず、淡々と、冷静に伝えるよう
心がけました。

以前、戦争物の長尺であるベテランの方が
アナウンサー役で呼ばれていました。
最近の現場では重要な役以外でベテランは呼ばれません。

アナウンサーや司会などの役は、
若手が兼ね役でやる事がほとんどです。
言い方は悪いですが、あまり重要視されていない
現場もあります。

しかしこの時は、なぜかベテランの方が呼ばれていました。
実際に聞いてみてその理由がわかりました。


ニュースの重みが全く変わるのです。

若手が読んでも、自分が読んでも、
それなりにはなります。
とりあえず現場には出ているレベルなので、
情報を伝える事はできます。

しかしベテランは違う。
その伝える情報の重要度が全く変わるのです。

煽るでもなく、淡々と、冷静に。
しかし聞いていると、大変な事が起こったのだ
とハッキリと感じされられます。

シーンの空気を変えるのです。

それがやりたかった。
でも、できなかった。

自分がニュースを読むと

軽い。
軽いのです。

悔しかった。

収録後の飲み会で、自分がやりたいと思った
アナウンサーを演じたベテランの方に
その時の話を聞く事ができました。

その方は、決して楽にやっているわけではありませんでした。

意図的に、狙って、あの重厚な雰囲気を
出そうとしていたのだそうです。
準備にもとても時間をかけたのだと話して下さいました。

あの重厚な雰囲気は、技術の上に成り立っていたのです。

自分も何とか、あんな風に空気を変えるアナウンサーを演じたいと
改めて思いました。