ヒーロー物の外画を終えて考えたこと

ヒーロー物の外画が終わって一ヶ月ほど経ちました。

最終話の収録が
上手くいかなかった。

自分も含め全体のリズムが悪く、
セリフを噛んだり、タイミングを外したりと
どうにも乗れないまま終わりました。

悔しかった。

自分はこの作品が大好きです。
メインキャラを演じているからだけでなく
子供の頃から憧れたヒーロー物だからです。

その最終話が気持ちよく収録できなかった。
悔しい。

終わってからずっと原因を考えていました。
そしてボンヤリとある考えに辿り着きました。

自分の芝居が間違っていたのではないか?

自分の役はジョークを言い、おかしな行動をとるお調子者
チームのムードメーカーです。

もう一人同じ立ち位置のキャラがいたのですが
チームの参謀キャラと一緒にストーリーから外れていなくなりました。

チームの軸になる参謀キャラとムードメーカーがいなくなり
収録の雰囲気がかなり変わりました。

参謀キャラを演じていたのは、
自分が子供の頃からアニメで主役を演じていた大ベテランMさんです。
収録中はとてもリラックスして楽しそうにしていらっしゃいました。

Mさんが居なくなって改めて、
その存在の大きさを痛感しました。

土台がごっそりなくなったような感覚でした。
とあるボイスオーバーでも同じ感覚を味わった事があります。
ナレーションを読むベテランが別の現場に行っていて遅れてきた事があり、
その人がいないだけで足場がなくなったような不安感に襲われた事がありました。

今回もそれと同じ事が起こりました。

しかし中堅のSさんが、Mさんがいらっしゃる時から
同じように軸を取っていてくれたので
Mさんがいなくなった後も同じように支えてくださり、
なんとか崩れずにいる事ができました。

そして自分と同じムードメーカーのH君
彼は劇団所属の若手です。

劇団でとても鍛えられていて、
収録中もその合間も会話の潤滑油になるなど
気配りができる真のムードメーカーでした。

自分は彼のような気配りは正直できませんでしたが、
いじられることにより違う方向から潤滑油になる事が何とかできていました。

MさんとH君の二人がいなくなった後を
Sさんと自分が引き継ぎ何とか回っていたのです。

しかし残り3話というあたりでSさんが体調を少し崩されました。
腰が悪かったようで少し元気がなかった。
芝居にははっきりわかるような影響は出ていませんでした。

その辺りで何となく収録のリズムが悪くなり、
出演者のミスが増え始めました。

空気が悪くなった事を全員が気付いていたと思います。
自分はムードメーカーとして攻める事で盛り上げていこうとしました。

上手く行くときもありましたが、
最終話はそうはいかなかった。

攻めても攻めても盛り上がらない。
自分自信、焦りと空虚感が膨らみ冷や汗が出ました。

結局そのままシーズン最終話が終わりました。

そして考えた結果、自分の芝居が間違っていたのではないか
という考えに至ったのです。

シーズンが終わって一ヶ月ほど後、
APHの演技セッションのエバリュエーションがあり
代表の話を聞いている時にその考えは確信に変わりました。

自分はあの時、守らなければいけなかった。

それまではMさんとSさんが二人でガッチリと足場を作り、
H君と自分がその上で跳ね回っていました。

それがSさん一人で足場を支え、
自分が一人で跳ね回る状態になっていところ
Sさんが体調を崩し足場が揺らいだのです。

ベテランMさんがいない状態で唯一の足場であるSさんが揺らいだ。
それを助けなければいけなかったのは立ち位置的に自分でした。

今の自分ではこの現場では、足場を守りながら攻めることができません。
攻めか守りか、どちらかしかできません。

周りが自分よりもっと格下ばかりならできなくはありません。
しかしこの現場はほぼ同格から上しかいない。
この状態では両方はできなかった。

あの時、自分は攻める事を選択しました。
それで盛り上げる事ももっと実力があれば出来たのかもしれませんが
その時点では自分にはそこまでの攻めの力はなかった。

だから、自分は守りに回らなければいけなかった。
Sさんと二人で足場になり他の役者を支えなければいけなかった。

多分、この考えは正しいと思います。
だから収録のリズムが崩れたのは自分のせいでした。

悔しい。

今までは支えられる側だった自分が
ようやく支える側になる時が来たのにできなかった。

結果的にSさん一人に押し付けてしまった。

代表から常々言われている責任という言葉が浮かびました。

あの時の自分が取るべき責任は、
足場を守る事だった。

もう一段階上に行くために。
稽古をしていきたいと思います。