石塚運昇さんへの追悼文

石塚運昇さんに初めてお会いしたのは
もう20年近く前になります。

運昇さんはとても気さくな方で、
ど新人の自分にも気軽に話しかけて下さいました。
幸運な事に、養成所の特別授業などで数回教わる事ができました。

運昇さんは全く飾らない方でした。
「自分の出番が終わったらロビーで寝てればいいんだよ(笑)」
と冗談を言われ返答に困りました。
本人がやっていたかはわかりません。

事務所の旅行で小さなお子さんを連れてこられた方がいると
「オジさんはポケモンの博士だよ~」
と嬉しそうに子供の相手をされていました。

その後自分が事務所を変わり、運昇さんに再会したのは10年ほど後の事です。
とある現場でご一緒したのですが、
流石に自分の事は忘れていらっしゃいました。

しかし、挨拶をし収録が進み休憩になると
腕組みをして考え込むように自分の前に来て
「お前、俺の知ってる◯◯か??」
と話しかけて来てくれて、現場で会えた事をとても喜んで下さいました。

そこから運昇さんと現場でたびたびご一緒する事ができ、
素晴らしい時間を過ごす事ができました。

運昇さんが芝居でたまに見せる弱さが好きでした。

強面の悪人をたくさん演じているのですが、
どの役もどこか人の良さが滲み出て悪人でも柔らかく感じました。

一番印象に残っているのがテレビで見た映画の吹き替えです。

気弱な医者の役で、あるシーンで婚約者を助けてお礼を言われた後
「よしっ!!」と嬉しくて小さくガッツポーズをするのです。
その「よしっ!!」が本当に頼りなくて、
でも何というか、可愛らしいと感じました。

ある時セリフが少なくてずっとロビーにいたらディレクターに
「もう終わりですか?こういう時はお菓子でも買ってくるもんですよ(笑)」
と冗談で言われたのに、その後慌てて出て行き本当に買ってきてしまう。
そんな所が芝居にも出ていたのではないかと思います。

もっともっとご一緒したかった。
自分が遠回りをしてその機会を逃してしまいました。

運昇さんと過ごした時間は自分の中で宝物になっています。
マイクの前にどっしりと立っている姿がカッコよかった。

謹んで哀悼の意を表します。
運昇さん、本当に有難うございました。