現場でNさんとご一緒させていただきました!!

感激しました!!

自分が初めてアニメーションという物を意識した作品に出ていた
Nさんに現場でお会いしました。

現場に入って準備していると、
年配の男性がスタジオに入って来ました。
挨拶すると
「Nです。よろしく」
と気さくに挨拶を返して下さいました。

Nさん?
劇団系の方かな?
自分は誰だかわかりませんでした。

アニメでは、台本が上がった段階では
メインキャスト以外が決まっていない事がよくあります。

そのため香盤表がメインキャスト以外空欄になっていて
配役が決まった後、その台本を渡される役者の名前だけ
手書きで書かれたりしています。

そんな状態だったので誰が来るのわからなったのです。

Nという苗字もよくあるもので特に気にもしていませんでした。
そして収録が始まり、
Nさんがマイクの前に立ち喋り始めると…

震えました。

30年近く前、自分が小学生の頃
学校が終わると急いで家に帰って見ていた大好きなアニメ
その主人公の師匠だったキャラクター。

その声が、あの頃のまま、全く衰えず
聞こえて来ました。
そこで初めて気付いたのです。
「あのNさん」だと。

スタジオの長椅子、その角の席
そこに座るNさんのすぐ横に自分は座っていました。

テストが終わると、自分は改めてNさんに挨拶をしました。
話がしたくてしょうがなかった。
現場で、収録中ですが我慢できなかった。

「あの作品が大好きでした」
「お会いできて感激しています」と。

Nさんは
「そうですか」
と嬉しそうに笑って言って下さいました。

それから本番が始まるまで、
当時の収録の話、最近のアニメの話などを
とても気さくに話して下さいました。

嬉しかった。
そして緊張してきました。

このNさんの前で芝居をするのです。
下手な芝居は見せられない。

自分はNさんとの会話はないものの、
Nさんのセリフが終わってすぐ次のシーンで喋り始めます。

そのシーンの切り替わりまでのほんの数秒間、
マイクの前に並んで立つ事ができました。

嬉しかった。

自分はこのシーンに出てくる子供の父親役で
野生動物を保護した子供に自然の厳しさを説く
という役なのですが…

「ちょっと厳しすぎますね」

いかん。

非常に良い緊張感で身体の力が抜け、
音も芝居も手応えがあったのですが…
気負いすぎた。

良い所を見せたかった。
とりあえずリテイクでOKをもらいました。
悔しい。

そしてNさんの後半のシーン。

衝撃を受けました。

こんな風に攻める事ができるのか。

自分はヒーロー物作品で賑やかす役をやっていて、
セリフの言い回し、テンションの上げ下げを駆使して攻めた芝居をしていました。
していたつもりでした。

それで最終回に上手くいかず、
攻めと守りを両方適切にできないといけないと感じました。

しかしNさんは全く違う。
攻めていました。
そして同時に守ってもいました。

なにも変わった芝居はしていない。
自分には新しく聞こえる表現もないように聞こえる。
しかしただただ徹底的に丁寧でした。

語頭、語尾、抑揚、喋り始めから終わり、その間、後まで、
とにかく極限まで丁寧に演じられているように聞こえました。

極限まで丁寧に演じる事で、
シーンの筋をしっかりと支え守り
同時に攻めているように聞こえたのです。

衝撃でした。

こんな攻め方ができるのか!?
守りながら攻める事ができるのか!?

変わった事をしていないのにとてつもない存在感がありました。
ああ、APHで教わっている技術を丁寧にストレートに使うとこうなるのか。
改めて理解しました。

本番のセリフでほんの一瞬、
Nさんが言い淀んだように聞こえました。
ディレクターからOKが出たので自分の聞き間違いかな?と思ったのですが、

「もう一度やらせて下さい」

とNさんが言いました。
Nさんは全く手を抜かない。
また徹底的に丁寧にリテイクを演じられました。

ヒーロー物の来シーズン。
Nさんのように守りながら攻める事を目指したいと思います。