「プロになるまでの全て!」Yさん編09

 

 

 

 

Tさんに紹介された

APH、「アクターズ・プレイ・ハウス」

どこにも行く宛てのなかった自分は興味を持ち、見学してみる事にしました。

当時のAPHは、小さなビルの地下にあり表に看板が出してありました。
地下への階段を降りるといくつかの部屋に分かれていて、その一つでまず面接をしました。

正直な所、特に何かを期待した訳ではありません。
どこにも宛てがなかったのでとにかく何かをしていたかった。
しかしおかしな所には行きたくない。
仕事につながりもしないのにお金を払いたくなかった。

参加した所がことごとくうまく行かなかった事で初めて、
「世の中にはうさん臭い所が沢山ある」
ということを学んだのです。

そのため興味は持ったものの、かなり疑ってもいました。

初めて代表にお会いした時の印象は、
ちょっと書きづらいですが
「怖かった」
です。

見た目がどうとかではなく、
事務所にいた時にお会いした大ベテラン声優と同じで
雰囲気が、「オーラ」とでもいうのでしょうか、
それが一般の人とは明らかに大きく違ったからです。

普段接している人達とは全く違うその雰囲気に、かなりビビりました。
自分が人見知りだったせいもありますが。

壁際にホワイトボード、その横に代表が座り、
その前に自分が座りました。

「初めまして」

挨拶された時、その音圧と雰囲気にとても緊張したのを覚えています。

後々になって他の人の面接を見ていて、
代表は特に意識的に音圧を出していなかった事がわかりました。
むしろ抑えていた。
ただ面接に来た人に真摯に対応していただけでした。

しかし当時の自分にとってはとても迫力があったのです。
今もです。

感じた迫力とは裏腹に、団体についてとても穏やかに丁寧に話して下さいました。

そこでいくらか緊張がほぐれ、
自分が持ってきた芸歴書を見ながら質問されました。

それに答えながら、
自分がどういう経緯でここに来たか、
仕事で失敗して事務所をクビになり、
なんとかしようとアレコレやってみたけど何一つ上手くいかなかった事を話しました。

そして稽古では、Tさんが言っていたように
ボイスの技術、演技の技術、その「仕組み」を教えるのだと言われました。
APHでの初級のボイス技術の説明は、
自分にとってとても分かりやすく
そしてとても正しいと思えるものでした。

当時の自分のレベルで技術が正しいかなど判断できるわけはありません。

しかし今まで通ったワークショップでは、
筋トレや発声を延々とやるだけでした。
腹筋400回!!︎て感じです。
よくある当たり前のトレーニングです。

APHでは、
もっと専門的に、もっと具体的に、どこをどう鍛えて、どう使うのか?
それを教えていると言うのです。

 

 

その説明はAPHで教える技術の初級編。
しかもほんの触りだけだったのですが、
「とても説得力があり理にかなっている」
自分にはそう感じられたのです。

だいたいのワークショップでは、
「じゃあこれから稽古して頑張りましょう」
などと言われるのですがAPHは違いました。

そこから、
「自分の精神状態がどうなっているか?」
という説明が始まったのです。

今の自分には、
過去の失敗が汚れた重りのようになって
こびり付いていて本来の力が発揮できていない。
そのこびり付いた重り。
過去の失敗と向き合ってその重りを取り除き、
本来の自分の力、想いを出せるようにする必要がある、と。

文字にすると

大変うさん臭い。

すいません。

しかしうさん臭いと感じながらも、
説明されたその内容は、まさに今の自分の状態そのままだと思えた。

今までいろいろなワークショップでいろいろなトレーニングの説明をされました。
そのどれも間違っているとは思わなかった。
でも「これだ!!︎」という確信も感じられなかった。
霧のようにぼやけて、手応えも実感もなかった。
よく分からない事を分からないままやっていた。
だから不安で仕方なかった。

代表の説明には、
技術についても、精神状態についても「確信」と「実感」がありました。
今はこういう状態で、
ここが間違っていて、
こう直して鍛えればこうなる
という、とても具体的で現実的な説明でした。
それが自分にも感じられた。

そして、
「いろいろやったけど何が正しいのか、どうしたら良いかもわからない」
自分の中にあったどうしようもないこの気持ちをそのまま言い当てられました。

急に涙が出てきました。

人前であんなに大泣きしたのは小学校以来でした。
泣きながら、
今まで通ったワークショップではどうしても上手くいく気がしなかった。
でも何かをやっていないと不安でしょうがなかった。
やっている事に全く自信が持てず迷ってばかりだった。
諦めようかと思ったけど、どうしても諦められなかった。
と、自分が今まで思った事を吐き出していました。

自分でも驚くくらい泣きました。

興味が湧いたのでちょっと話を聞いてみて、
良かったらやろうかな?位のつもりだったのが
いつの間にやら自分の思いを全て吐き出しながら大泣きする事になるとは
全く想像していませんでした。

自分は、
「このAPHで頑張ってみよう」
そう決めました。

事務所をクビになった。
その分岐点になった自分の判断。

Tさんのお陰でたどり着いたAPH。
自分の人生の中で、このAPHに入るという判断は、
一番大きくて一番重要な分岐点になりました。

APHの稽古を見学した帰り。
当時のメンバーの一人に
「いつから来るの?来週?」
と聞かれとても困りました。

そう、

金 が な か っ た の で す。

月謝と入会金が払えない。

入りたくても入れない。

ちゃんとバイトはしていましたが
借金の返済や今までのワークショップ代で貯金など無く、
すぐには払えなかった。
自分が実際にAPHに入るのは二ヶ月後になりました。
頑張ってバイトしました。

 

 

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