「プロになるまでの全て!」Tさん編08

 

 

 

 

ありがたいことに、クビにはならず(笑)
そのまま継続することができた。

プロになったけど、いまいち、ピンと来ていない。
なんか、楽をしてお金を稼いでいる感じがしてしまった。
というと語弊があるかもしれないが、私のイメージするプロには実力がある。
漠然と考えてるから、本当の実力が何かなんて、わかっちゃいない。
でも私は、私の思うプロのイメージからずいぶん遠い場所にいた。

巡業は私の居場所だった。
専門の同期は四季の舞台で主役を張っている。
仲の良い友人も自分が不合格になった大きな作品に出演し、帝国劇場に立っている。
正直、羨ましかった。
自分はその力も自信もないし、認められない。
比較されていつも選ばれない。

しかし
「巡業で下積みをしたら役者の基盤ができそうだ。」
「パッと出る役者よりも息の長い役者になれそうだ」
という私の勝手なイメージを軸にして、
負けず嫌いで自信がない私を支えた。

私がいる場所は、世間から見たら落ちこぼれだった。
もちろん、そうではない。
私の固定観念だ。
結局の所、人からどう見られるかをすごく気にする傾向がある。
良い評価を受けたい、名声が欲しい、褒められたい。
巡業は大変だけど将来ビッグになったら、賞賛が得られるにちがいない。
そんな計算を腹に納めた。

確かに巡業で鍛えられた。
スタッフさんのお仕事を実際に自分がやることで、こんなに大変なのかと・・(笑)
欲まみれな自分、評価を気にする自分、傲慢な自分を打ち砕くにはよい環境だったと思う。
でも、それが糧になるかどうかは、その人次第。

本当なら少しでもこの経験が未来の自分に良い影響を及ぼしていてほしいが、
欲まみれで褒められたい私は、どう見られるのかが重要で、
正直、人として学ぶべき事をすっ飛ばした。

この経歴が有れば、きっと将来的に友人に負けない。(バカか。)
こんなふうに、すぐ人を敵にしてしまう悪いクセがある。

オーディションに落ちることで劣等感を感じ、固く落ち込む。
私も「ダメじゃない」「すごいね」って言われたい。
合格している人が、敵にしか見えなくて自分が痛い。
でも・・この下積みを超えたら、大きなオーディションに私はきっと受かるんじゃないか。
だから、がんばろう。

オーディションに落ちても平気でいて傷つかないようにするには、
何かしらの思い込みが必要だった。
虚勢を張っても意味なんかないのに。

私は、欲という闇から這い上がる業を持った女優です。
腹黒だから。 (笑)

まず巡業というステップ1で、そこを越える何かに気づいてもらいたいが、
腹黒い私はまだわからないままだった。

 

 

さらにいうと肝心なお芝居の事も何もわからないでいる。
もうワンパターンだった。
だって、求められてるものがあるから、それしかできない。
その台本ができれば、オッケーだった。

だけど、その求められてるものもちゃんとできていたかというと疑問だ。
演出家の言いなりだった。
自分に実力がないから、何も言い返せない。
その上、自分のどうしたい!っていう考えも、曖昧。
何にも考えてない自分は、そこをどうしていいかわからなかった。

人に合わせることで、楽をしてた。
悪く思われたくないから言われたことをそのまま鵜呑みにする。

私はどうしたいの?
それが、ない。
いいこちゃんの典型だ。
「腹黒良子(はらぐろよいこ)」という人間が出来上がった。

腹黒良子は、受け身だった。
まだ何かを誰かに教わろうとしている感じ。
上手くなりたいけど、わかんない。
誰に教わろうか。
そんな視点でしか物事を考えられないようだ。

気持ちは上には行きたいけど、行動と考え方が伴わなかった。
子供たちからサインを求められると、
バカだから調子に乗った。

と同時に、なんかわからないけど、もやもやした。
周りと比べて、何にも考えてない自分が、悔しいくらい何にも考えてない事が嫌だった。
でも、何をどう考えて良いのかも分からず、
途中で諦めて考えるのをやめる。
だから、ずっとバカのままだった。

もっというと、日常に流されていた。
私は、本番をこなしていたのだ。
当時は、こなしてるなんていう考えもない。

なぜやっているのか?
中身を埋めようとした。

子供が好き。
そこから先は行き詰まる。
ただ目立ちたいだけかもしれない。
それではダメだ。
子供たちになにができるか考えてみよう。
そこに、ステキな理由を肉付けしようとしたのだ。
全部、キレイゴトだった。
でもやっぱりこの仕事、やめたくない。
子供たちへの想いがあるから頑張れるんだと思い込んだ。

好きだからやってる。
プロっていったいなんだろうか?
私はこの先、どうするんだろうか?
私はどこへ向かうのか。
どうしてやってるのか。
答えにたどり着かない。

ひとりの力では決して気づくことができなかった「影響力」という言葉の定義。
私には、影響力を持つものとしての責任がある・・・
ということに気づくのは
まだ先。

実感を持って人に感謝をするというのもまだまだ今の私にとっても修業の一部。

この時は、今よりもっと固くて、停滞していた。

 

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