「プロになるまでの全て!」Tさん編05

 

 

 

 

バイトとレッスンに明け暮れる日々。

ダンスの先生やメンバーに対しての過去の失敗が、
ずっと心に引っかかったままで苦しい。

どうやったら、それを乗り越えて、
夢に対して前向きになれるのかがわからないまま、
小劇場の舞台に参加する。

本当は子供番組がやりたい。
でも今、何したらいいかわからない。

次はどこにしようかとオーディション雑誌を片っ端から見て
気になる舞台のオーディションを受けては落ち、受けては落ちの繰り返し。

モチベーションが下がる。
だからレッスンに行きまくった。

その時は、そうするしかないと思っていたから。

ある日、歌の先生が1枚のチラシを差し出しながら、

「知り合いが振付をしていて信頼できるから受けてみたら?」
と勧めてくれました。

そこには「子供ミュージカル出演者募集」と書いてありました。

題名は「スクラップ」

あっ、これ受けよう!

早速書類を送ると、一次審査通過の合格通知が届きました。
私は歌の先生に報告をして、二次審査を受けに行きました。

審査内容は歌、ダンス、リズム感。

歌は自由曲なのに女子全員用意した曲が一緒・・・・(笑)
とても緊張したけれど、歌もダンスものびのびできて手応えも感じました。

2人だけが受かる予定。

帰り際、審査員の1人に
「一緒に仕事したいです」と言われました。

確信を突く一言でした。

これは受かったに違いない。

嬉しくてたまらない帰り道でした。

次の日、バイト中に携帯をポケットに入れて、
今か今かと合格の連絡を待ち構えていました。

・・しかし、いつまでたっても電話が来ない・・なんで?

一緒に仕事したいって言ってたじゃんか。

なんでー。

あっもしかしたら、番号間違えてるんじゃないか・・・。

なんて自分に都合の良いように考える始末。

結局、連絡は有りませんでした。
確信を持った分だけ、がっかり度が半端ない。

落ちた。

信じられなかったけど、認めざるを得ませんでした。

 

 

数日後、知らない番号から電話が有りました。

「もしもしTさんですか?あの、スクラップじゃないんですけど
出て頂きたい作品が有りまして、明日うちの事務所に来れますか?」と。

私は、よくわからないまま「はい!」と即答していました。

しかし・・一体、何が起きたのか・・・

歌の先生が、知り合いである振付家から一連の流れを聞いていたようで・・・

実は私を別の作品に誘いたいと思ってわざと落とした事実が判明しました。

つまり、引き抜かれたのです。

翌日、電話で話した代表兼演出家と事務所で対面し、
今回の経緯を聞き、事の真意を得ました。

「実はあなたにはこれをやって頂きたいのです」
DVDの映像が流れる。

「Tさんに演じて頂くのは魔女とお母さんの二役です。」
画面をじっとみる。

元宝塚の方がその役を演じていらっしゃいます。

ん?

私がこの宝塚の方と同じ役?

いやいやいや、ないないない

間違いだろう。
うん。きっと何かの間違いだ。

って思ったけど、間違いでは有りませんでした。

詳細を聞くと、この元宝塚のYさんのポジションに私が入り、
全国の小学校で公演をしてほしいと。
仕事なのできちんとギャラは出るし、
巡演なので宿泊施設はもちろん劇団側で用意されます。

聞く分には条件も良く、
下積みする場所としても良さそうな気がしてきました。

この巡り合わせは、きっと意味があるに違いない。
私は二つ返事で引き受けました。

レッスンとバイトで安定していた日々から一転。

お金を払ってレッスンをする立場からお金を頂く立場へ変わる。

時々レッスンで「うまいね」とかなんとか言われて満足していた素人から、

プロになるのだ。

私は以前、仕事をするためにはレッスンしなくてはいけないと決めつけていました。
今考えると・・錯覚です。

本当に必要なのは、稽古。
考え方1つが私をプロから遠ざけるのだと、APHで学びました。
でも、それはしばらく先の事。

私はこれから仕事をする。

現実に台本がここにある。

はじめて手にする仕事の台本。
今回参加するミュージカル「青い鳥21世紀バージョン」は、オリジナル作品。
モーリス・メーテルリンク作の童話劇「青い鳥」を
面白おかしく現代の小学生に当てはまるように書き換えてある。

「きれいなものを見た時は、きれいだね。
美味しいものを食べたなら美味しいね。
心が響きあう。それが共感。」

「今はいつでも今しかない」

子供向けの台本と言えど、大人にも響く台詞や歌詞が沢山あってワクワクする。

「まさに私が求めていたのは、これかも・・・・。」

自分の深いところと繋がっていく感じがしました。

 

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