●●を教わってから、だいぶ経ちました。
正直、全くと言って良いほどできていないのだと思います。
しかし、変化は確かにありました。
事あるごとに、というかずっと現場で使っていると
一音一音に意識が行くようになってきます。
自分のセリフは、以前は一本の線のような意識しかなく、
言っていることはちゃんと伝わるけど印象が薄いセリフであったと思います。
それが●●を意識するようになって力点が生まれ、
それを中心に緩急や高低ができやすくなったように思います。
今日の現場は、田舎町を舞台にしたサスペンスものです。
自分はメインキャラの一人、ひねくれ者だけどナイーブな少年です。
このキャラは、小説家を目指していて物語の最初と最後のナレーションも務めています。
なので言葉の一つ一つをハッキリ丁寧に、
滑らかに喋ろうとしています。
こういうのは、どちらかと言えば得意だと思っていました。
しかし、●●を教わってから気付いたのは
今までは滑らかだったのではなく
滑っていたのだという事です。
尊敬する大先輩は、滑らかだけどとても印象的なセリフを喋ります。
自分は滑らかですが、印象が薄い。
滑って流れていたのだと思います。
この一音一音を丁寧に、滑らかに喋ろうとすると
物凄く集中力がいります。
そして、滑った事が自分で分かるようになってきました。
ディレクターからはOKは出る。
しかし自分ではどこをどう滑ったかわかっているので、やり直したくなる。
何度かやり直しをお願いした事もありますが、
この作品はちょっと特殊な条件で収録しているため
いろいろ時間に余裕がありません。
なのであまり言えない状況にあります。
10年以上前、ある大ベテランの方が
何度も何度も自分からリテイクを申し出て
その方以外、共演者からスタッフまで誰も何も言えなくなった事がありました。
他人には何をやろうとしているのか全くわからなかったのだと思います。
しかし回数を重ねる度に良くなっている気がしました。
結局、時には苛立ちで台本を叩きつけながら
その方は10回以上やり直しました。
でも誰も文句を言う気持ちにはならなかったと思います。
それだけの価値があったと感じたのではないでしょうか。
こう言った話はAPHの講義でも代表から伺いました。
これができる条件は、
それが許されるほどの飛び抜けた実力がある事です。
自分はまだまだ足りません。
なので少ない回数でも、今よりもっと質を上げられるよう準備をして
現場に臨みたいと感じました。