「プロになるまでの全て!」Yさん編18

 

 

 

 

養成所は基礎科と本科の二年制。
一年はあっという間に過ぎました。

そして本科に上がった直後、思いもかけない事が起こりました。

なんと養成所を運営している事務所の所属声優の半分が辞めたのです。

しかも

自分がこの養成所を選んだ理由でもあった有名声優やベテラン声優達が、
さらに事務所の社長までも辞めたのです。

耳を疑いました。
そして激しく動揺しました。

なぜこんな事になったのか?
社長が辞めたってどう言う事?
この事務所は大丈夫なのか?
養成所に影響は?

今さら別の所にも行けません。
自分はもう一年頑張るしかない。

ここで自分を褒めてくれていた講師の一人である現役声優Dさんも辞めたため、
担当の講師が変わりました。
この時Dさんから、
「最後まで面倒見れなくてすまない。結果だけでも教えてくれ」
と言われ連絡先を渡されました。

ここまで気にかけてくれるのを有り難いと思いつつ、
自分を評価してくれていた人がいなくなる事に大きな不安を感じました。

このDさんの言葉が後々大きな意味を持ってきます。

しかしこの時は、
「またゼロからアピールし直しか!?」
と残りの授業と新講師を攻略する事で頭がいっぱいでした。

幸いというか当たり前というか、
APHで教わった事は新しい講師にも同じように評価されました。
自分は本科の一年も圧倒的、ダントツのトップで居続けたのです。

 

 

 

 

養成所の二年目も終わりに近づき、
所属試験が間近に迫りました。
養成所内でも誰が有力かという話題が尽きませんでした。

生徒の中でも、自分は所属有力候補のトップという扱いでした。
自分自身もそう思っていました。

しかし所属試験が終わり結果が封書で届くまで、
とてもとても不安でした。

確かに圧倒的、ダントツのトップで居続けました。
でも年齢がもう30になる。
それを事務所側がどう捉えるか。

毎日ポストを覗く時、汗がドッと溢れました。

そしてとうとう
結果が届きました。

自分はどうしても落ち着かず、
部屋を出て駅までの道を歩きながら封筒を開けました。
何か悪い予感がしたのか、ただの不安かはわかりません。
とにかく部屋では息が詰まりそうだった。

封筒の中には紙が一枚入っていました。
厳正な審査の結果とかよくある言葉が並んだ後

「不合格」

と書かれていました。

頭が真っ白になりました。
何も考えられませんでした。
前の事務所に戻るために夜の道端で社長に頭を下げた時と同じ感覚です。
しばらく記憶が飛びました。
そうやって道端で呆然としていましたが、
代表に報告する事を思い出し電話をかけました。

「ダメでした。申し訳ありません」

代表に自分の言葉で伝えた事でようやく実感が湧いてきました。

落ちた。

ダメだった。
 

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